業務上のミスに対する損害賠償請求について

【質問】

私は運送会社に勤めているのですが,荷物を搬送中に運転操作を誤ってしまい,会社の自動車を電柱に衝突させてしまうという交通事故を起こしてしまいました。

会社からは,修理費用等を支払え,支払えなければ給料から天引きすると言われています。

私は会社に弁償しなければならないのでしょうか。

【回答】

業務上のミスをして会社に損害を与えてしまっても,必ず会社に弁償しなければならないというわけではありません。

また,仮に会社に対して弁償しなければならない(損害賠償義務がある)としても,全額を弁償しなければならないというわけではありません。

どのような不注意でミスをしてしまったのか,ミスを誘発するような業務体制を会社側が防止できなかったのか等,労働者側と会社側双方の事情を考慮して判断されますので,具体的な事実関係を整理しましょう。

なお,会社側が修理費用等を給料から天引することはできません。 

【解説】

1 業務上のミスに対する会社からの損害賠償請求の可否

そもそも,労働者が通常必要とされる程度の注意をしていたにもかかわらず,ミスを起こしてしまった場合には,労働者に過失が認められないため,労働者には会社に対する損害賠償義務が生じないと考えられます。

また,労働者のミスが軽度な過失によるものだとしても,会社は労働者を使用して利益を上げている以上,ある程度のリスクは会社が負担すべきであるとして,やはり労働者の会社に対する損害賠償義務は生じないと考えられます。

2 損害賠償の範囲

次に,労働者の過失の程度が小さくないために,会社に対する損害賠償義務が認められるとしても,労働者が会社に対して全額の賠償責任を負うわけではありません。

この点については,いくつか裁判例も出ています(最判昭和51年7月8日)。

どの程度の範囲で損害賠償義務を負うかという点については,個別のケースによって異なりますが,労働者側の過失の内容や,使用者側の管理体制の不備等,双方の事情が考慮されます。

 3 損害賠償債務と賃金の相殺の可否(天引きの可否)

なお,会社が労働者に対して損害賠償請求ができるとしても,賃金と一方的に相殺することはできません(労働基準法24条,17条)。

したがって,会社が労働者の給料から天引きすることも許されないことになります。

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