退職金請求をしたい方へ

退職金請求をしたい方へ

第1 退職金を請求したい方へ

(仮称)石井さんのケース

私は,いまの建設会社に30年以上勤めてきました。先代の社長の時代から勤めており,会社のために人生を捧げてきたと自負しています。

ところが,昨年に先代社長が急逝し,その長男が会社を引き継ぐことになりました。
社長の交替に伴い,会社の方針が大きく変わってきたことから,私は会社のためを想い,新社長に意見を申し上げました。

すると,新社長は,私が業務命令違反等を犯したと決めつけ,懲戒解雇を言い渡してきました。

懲戒解雇自体も納得できませんが,さらに懲戒解雇だから退職金も支払わないと言われています。

 

私は退職金を請求することもできないのでしょうか?

 

会社とトラブルになってしまったために,退職金を減額すると通告されたり,支払われないと通告されたりするケースはまま見受けられます。

第2 労働時間の考え方

1 法律上の原則

労働時間をどのように考えるかということについては,法律で具体的に規定されています。

労働基準法は、労働時間の上限と例外、休日の原則と例外、休憩・年次有給休暇等を定めています。

労働時間に関する原則としては,以下の3つが挙げられます。
退職金請求図1

2 労働時間とは

労働時間とは,使用者の指揮命令下で労働力を提供した時間を言います。

ここで注意していただきたいことは,①実際に作業に従事した時間,以外にも,②作業の準備や後片付けをしている時間,③待機している時間も,労働時間に含まれるということです。

例えば,作業服の装着,準備体操場までの移動,始業時間前の資材の受け出し,実作業の終了後の片付けにかかる時間も労働時間に含まれます。

また,警備会社等で問題となることがありますが,作業途中で次の作業のために待機している時間や,仮眠時間とされていても、必要があればすぐに対応することが義務付けられている時間も,労働時間に含まれます。

3 労働日とは

労働契約では,働くことが義務付けられている日が「労働日」,働くことが義務付けられていない日が「休日」とされます。

労働基準法は、週1日以上の休日を置き、現実に休ませることを要求しています。
これを「法定休日」と言います。

また,「法定休日」と対になる概念として,「法定外休日」というものがあります。
「法定外休日」とは,法定休日に加えて付与される休日を言います。
例えば,祝日や,土日の週休2日制の土曜日等がこれにあたります。

4 残業とは

そもそも,残業させることは原則として認められません。

残業が認められるのは,①災害等による臨時の必要がある場合と,②36協定が締結され,労働基準監督署長に届出をしている場合に限られます。

そして,残業は,①法外残業と②法内残業の2種類に分けることができます。
①法外残業とは,法定労働時間を超える労働(「時間外労働」)をいい,②法内残業とは,所定労働時間(例えば6時間)を超えるが、法定労働時間(8時間)を超えない労働(例えば7時間のうちの1時間)をいいます。

5 休日労働とは

休日労働とは,法定休日における労働のことをいいます。

休日振替とは、定められた休日と所定労働日を事前に変更することをいい、振替の結果休日とされた日を振替休日といいます。

一方,代休とは、事前に休日の変更をせず、「休日労働」させた代わりに後日、所定労働日の労働義務を免除して休ませることをいいます。

6 深夜労働とは

深夜労働とは,深夜労働時間帯(原則として22時から5時まで)の労働のことをいいます。

深夜労働には割増賃金請求権があります。
また,残業として深夜労働をした場合には別途、残業に対する割増賃金請求権もあります。

7 36協定とは

36協定とは,時間外・休日労働に関し、事業場の労働者の過半数を組織する労働組合、そのような組合がない場合には事業場の労働者の過半数を代表する者と使用者との間で、書面の協定をし、労働基準監督署長への届出がされた場合に、例外的に時間外・休日労働が可能とする協定のことをいいます。

労働基準監督署への届出が要件となりますので,届出を怠った場合には36協定の効力は生じません。

第3 労働時間の計算

このような点を踏まえて残業代を計算していくことになります。

それでは,具体的にはどのように残業代を計算することになるのでしょうか。

残業代の基本的な計算方法は,所定賃金から時給を換算し,労働時間数と割増率を掛けていくことになります。

【時間外・休日労働】

所定賃金÷月間所定労働時間×(1+割増率(0.25/0.35))×時間外労働時間数

 

【深夜労働(残業の場合)】

所定賃金÷月間所定労働時間×(1+割増率0.25+0.25))×深夜労働時間数

なお,割増率は労働時間帯によって異なります。割増率を整理すると以下のようになります。

種類 割増率
時間外労働 25%以上
休日労働 35%以上
深夜労働 25%以上
時間外・深夜労働 50%(25%+25%)以上
休日・深夜労働 60%(25%+35%)以上

第4 具体的な計算例

それでは,具体的なケースを前提に,どの程度の残業代が請求できるかを検討してみましょう。

(仮称)佐藤さんのケース

私は,事務職員として,毎月30万円の給与を得て働いていました。不景気のためになかなか新人も採用されず,私に任される仕事は年々増えています。いまは毎日残業しなければとてもこなしきれません。先日,私は毎月どのくらい働いているのだろうと考えたとき,タイムカード等を見返すと,毎月平均240時間も働いていることが分かりました。

佐藤さんの場合,月給が30万円ですから,月間所定労働時間を平均160時間と仮定すると,時給=1875円となります。
そして,毎月平均240時間働いていたとすると,時間外労働時間は(240—160)=80時間となります。
したがって,毎月以下の残業代が発生していることになります。

30万円÷160時間×(1+0.25)×80時間=18万7500円

これを1年分に換算すると,18万7500円×12ヶ月=225万円 にもなります。
さらに,深夜残業や休日労働も加わったりすると,割増率はさらに高額になるため,残業代はより高額になります。

第5 残業代請求のために

1 証拠の確保

それでは,残業代を請求するためにはどのように対応したら良いでしょうか。

まず,所定賃金と,実際に働いた時間が確認できる資料を収集する必要があります。
所定賃金は給与明細等で確認することができるため,用意はそれほど難しくありません。

問題は,実際に働いた時間が確認できる資料です。
使用者には実際の労働時間数を把握すべき義務がありますが,実際にはそれが十分になされていないことが珍しくありません。
そこで,タイムカードやパソコンソフトを立ち上げた時刻の記録,スイカ利用明細の時刻等で実労働時間数を確認することもあったりします。

また,タイムカードを使用者側が開示してくれれば良いのですが,開示に応じてくれない場合には,証拠保全手続も検討しなければならないこともあります。

さらに,残業代に関する規定がないかチェックするために,就業規則等も確認する必要があります。

残業代請求を検討する際には,事前にこれらの資料をチェックしておく必要があります。

2 残業代請求の方法

このような資料を収集した上で,残業代請求をする方法としては,以下の方法が考えられます。

退職金請求図2

このうち,交渉段階では,請求書を送付し,こちらが要求する残業代を求めていくことが一般的です。
ですが,請求書の送付だけでは使用者側も対応してこないこともめずらしくありません。

そこで,交渉ではうまく行かない場合には,労働審判による解決も検討する必要があります。
労働審判は原則として3回の期日で解決することが予定されており,非常にスピーディーに手続を進めることができます。

なお,労働審判でも合意に達することができない場合には,本訴に移行することになります。
(労働審判を経ずに直接本訴をすることも可能です。)

但し,本訴に移行する場合には別途訴訟費用(裁判所に納める印紙代等)がかかるほか,解決まで長時間を要するため,この手続を選択すべきかどうかはよく検討する必要があります。

【参考文献】労務相談実践マニュアル 46頁〜

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