■退職届を出してしまった場合の対処

退職届を出してしまった場合の対処
 

1 具体例

 

「毎日のようにクビだと言われたから,諦めて退職届を出してしまった…。」

「解雇よりはましだと思って退職願を出してしまった…。」

 
自分から退職届や退職願を出してしまった場合,労働契約の継続を期待することはもはやできないのでしょうか。
 

2 退職届の種類・法的性質

あまり意識されていない方が多いのですが,一言で退職と言っても,大きく分けて2種類あります。
一つは,①労働者から,一方的に労働契約の解約を申し入れること(いわゆる「辞職」です),そしてもう一つは,②労働者と使用者が合意して労働契約を終了させる合意解約,の2種類です。

さらに分析的に検討すると,退職は以下の3つに分類することができます。

① 一方的解約(辞職)の通知
② 合意解約の申込
③ 合意解約の申込に対する承諾

この3つの種類を意識していない方が多いのですが,それぞれによって要件や効果が異なります。
そして,退職の撤回を求める場合には,それぞれ対応が異なります。

したがって,ご自分の退職願が上記3つのどれにあたるのかは,良く検討しなければなりません。
 

3 退職届の撤回

それでは,すでに退職願を出してしまった方が,やはり撤回して働き続けたいと思った場合,どうすればよいでしょうか。

退職願の種類に分けて,それぞれについてご紹介します。
 

(1) 退職届が一方的解約(辞職)にあたる場合

この場合,労働者からの一方的な解約通知であり,使用者に到達してしまうと,到達時に効力が生じることになります。

したがって,使用者の同意がない限り,撤回はできないことになります。
 

(2) 退職届が合意解約の申込にあたる場合

この場合,使用者が承諾する前であれば,労働者は合意解約の申込を撤回できるかどうかが問題となります。

この点,判例は,「使用者が承諾の意思表示をし,雇用契約終了の効果が発生するまでは,使用者に不足の損害を与える等信義に反すると認められるような特段の事情がない限り,被用者は自由にこれを撤回することができる」としています。
(名古屋高判昭和56年11月30日)
 

(3) 退職届が合意解約の承諾にあたる場合

使用者が合意解約の申込をした後,労働者がこれに対して合意解約を承諾する意思表示をした場合,その時点で合意解約が成立してしまいます。

したがって,使用者の同意がない限り,退職届(承諾の意思表示)は撤回できなくなります。
 

(4) 退職願を出してしまった後にとるべき対策

このように,退職願を一度出してしまった場合,あとで撤回することは法的には困難です。

もっとも,そうであってもまずは退職願の撤回の申入をしておくべきです。
法的には撤回することができなくとも,使用者が撤回に応じてくれることもあり得るほか,撤回が認められる場合であっても,撤回が遅れたために使用者が承諾してしまい,合意解約が成立してしまうこともあるためです。
 

4 退職届の取消・無効

また,退職願の撤回を申し入れる以外にも,退職届の有効性を争う方法もあります。

退職願を出した意思表示に瑕疵があるということであれば,退職願の意思表示は無効ということになります。

具体的には,
①心裡留保(民法93条),
②錯誤(民法95条),
③詐欺(民法96条),
④強迫(民法96条),
⑤公序良俗違反(民法90条),などを主張することが考えられます。

 
但し,いずれの方法であっても,退職願の取消や無効を認めさせることは簡単ではありません。

安易に退職願を出すことのないようにすることが重要です。

 
【参考文献】労務相談実践マニュアル 227頁〜
 

お問い合わせはこちら