取締役の労務管理について(労働者該当性)

弁護士法人長瀬総合法律事務所は、法的専門知識を活用して、お客様のご相談に対応しています。今回は、派遣業を営む企業のご相談事について、わかりやすくご説明いたします。

ご相談内容

従業員を取締役に任命して、雇用保険の資格を失わせることで、残業代トラブルを回避できるか検討しています。ただし、従業員は引き続き派遣労働者として派遣先で働く予定です。

問題点の検討

1. 労働基準法の「労働者」の概念について

労働基準法による規制は、労働者としての地位に基づいています。ただし、取締役などの役員は委任契約の関係で、労働基準法の規制を受けないことがあります。しかし、労働者性の判断には形式だけでなく実質的な要素も関わります。

2. 役員の「労働者」該当性の判断要素

取締役の労働者性の判断には、以下の要素が考慮されます。

  • 就任経緯:退職手続が取られているか
  • 権限・業務執行:会社業務に関与しているか
  • 報酬:報酬の性質や額
  • 労働保険・社会保険の加入状況

具体的検討と結論

労働保険の資格が失われたとしても、取締役の労働者性が失われるわけではありません。労働者性の判断には、様々な要素が関わります。特に、取締役としての業務執行の程度が重要です。派遣労働者としての業務に従事する場合、労働者性が強まる可能性があります。

法的リスク

取締役を労働者として扱わない場合、雇用保険法違反や未払残業代請求、退職トラブルなどのリスクが生じます。特に、労働者としての地位が認められる場合、適切な対応が必要です。

対応方法の検討

取締役を労働者性を持たない立場にするためには、役員としての業務執行や報酬の性質、労働保険の加入状況などを検討する必要があります。ただし、労働時間管理や残業代トラブルの回避を目指す場合は、適正な労働時間管理や定額残業代制度の運用を検討することが重要です。

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