従業員に訴えられた場合の初動対応③(労働審判)

相談内容

当社は、業績が悪化したために人件費を調整する必要があったことから、問題行動を繰り返す従業員Aを解雇することにしました。

Aは、当初は解雇されることも仕方がないと受け入れる様子を示していましたが、解雇されてから1ヶ月後に「不当解雇であり到底受け入れることはできない」という旨の内容証明郵便を送付してきました。

当社としても、Aの在籍中の問題行動を容認することはできなかったため、Aの復職を拒否しました。するとAは、労働審判を申し立ててきたのです。

裁判所から送付されてきた労働審判の案内には、約1か月後に裁判期日が設定されていると書かれていました。さらに裁判期日の1週間前を目途に、会社側の反論を記載した答弁書を提出するようにという指示もありました。

ですが、当社はこれから繁忙期を迎えるため、とても答弁書を準備している時間を確保することはできません。

どのように対応すればよいのでしょうか。

回答

  • 労働審判は、原則として3回の期日で解決するという運用になっており、通常訴訟と比べて迅速に進んでいくという特徴があります。
  • 労働審判は、実質的に第1回期日で労使双方の主張立証を尽くすことが求められる傾向にあるため、会社側としては事前に入念な準備をして臨む必要があります。
  • 労働審判に対応するためには時間的猶予がありませんので、お早めに労働問題に詳しい弁護士に相談をすることをご検討ください。

労働審判が申し立てられた場合の初動対応

労働審判とは、最近の個別的労働関係に関する紛争の増加傾向に対処するために、迅速かつ適切に解決を図ることを目的に制定された手続です。

労働審判では、労働審判官(裁判官)1名と、労働関係に関する専門的知見を有する労働審判員2名で構成された労働審判委員会が事件を審理します。

労働審判の特徴

労働審判は、原則として3回以内の期日で、調停(話し合い)による解決が試みられます。調停による解決ができない場合には、労働審判委員会が労働審判を行い、解決を図ります。

労働審判制度は、労働紛争の迅速な解決を図ることを目的とした制度ですから、手続が非常に早く進みます。

したがって、早めの対応が大切です。

労働審判の流れ

労働審判制度は、労働紛争の迅速な解決を図ることを目的とした制度ですから、手続が非常に早く進みます。

労働審判の申し立てがあると、労働審判官は、原則として申し立てがされた日から40日以内に第1回期日の指定をして、事件関係者の呼び出しをするとともに、相手方に対して答弁書の提出期限を定めます(原則として第1回期日の10日前程度)。

そして、相手方は、指定された提出期限までに答弁書を用意しなければなりません。通常の裁判では、第1回期日の答弁書は、申立人の主張を認めるかどうかについてだけ回答する程度でも足りるのですが、労働審判では第1回期日から充実した審理を実現するために、反論の具体的な理由や証拠を提出しなければなりません。申立人側は十分に用意した上で申し立てをすればよいのですが、相手方からすればごく限られた短時間で用意をしなければならないため、非常に負担の大きい手続といえます。

労働審判の手続の概要は以下のとおりです。

労働審判手続きの流れ

※労働審判手続の詳細をご存知になりたい方は、こちらもご覧ください。

ケース別労働問題対応サービス その4

労働審判に対応する際のポイント

このように労働審判は、非常に迅速に進められるという特徴があります。

労働審判は申し立てられてから第1回期日が設定されるまで、最長でも40日程度しか感覚が設けられないことになっています。労働審判の申し立てを受ける会社側としては、反論の準備に充分な時間を確保することができないといえます。

しかも労働審判は実質的に第1回期日において労使双方の主張立証がつくされる傾向にあるため 会社側としては第2回目以降に詳細な反論をすれば良いと 悠長に構えることは難しいといえます。

したがって、会社側としては、第1回期日までに どれだけ反論の準備を進めることができるかによって労働審判への対応が成功するかどうかが別れることになります 。

このように、労働審判は、会社側にとってデメリットが多いように感じられますが、通常訴訟とは異なり、原則として第3回期日までに解決が図られることになるため、会社側としても労働問題を早期に解決することを希望する場合にはうまく利用することも検討する必要があります。

労働審判を申し立てられた場合は労働問題に詳しい弁護士にご相談ください

労働審判は、原則として3回の期日で解決するという運用になっており、通常訴訟と比べて迅速に進んでいくという特徴があります。

労働審判は、実質的に第1回期日で労使双方の主張立証を尽くすことが求められる傾向にあるため、会社側としては事前に入念な準備をして臨む必要があります。

労働審判に対応するためには時間的猶予がありませんので、お早めに労働問題に詳しい弁護士に相談をすることをご検討ください

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