従業員に訴えられた場合の初動対応①(内容証明が届いた)

相談内容

当社は、慢性的な人手不足に悩んでいたことから、人材紹介会社の話に飛びつき、中途採用を決定しました。

ところが、採用ハードルを下げていたこともあってか、この中途採用した社員Aが、入社直後から同僚と喧嘩をしたり、果てには取引先にも怒鳴り込んだりするなど、信じられない言動を繰り返すなどの問題社員だったことを見抜くことができませんでした。

当社は、すぐにAを解雇しました。

すると、解雇してから1週間後に、Aの代理人弁護士から、不当解雇であるという内容証明郵便が送付されてきました。

当社としては、どのように対応すればよいのでしょうか。

回答

  • 従業員から内容証明郵便が届いた場合、無視することは厳禁です。
  • 従業員側の主張内容を精査した上で、会社側の対応が法的に認められる可能性が高いかどうかを詳細に検討する必要があります。
  • 検討の結果、会社側の言い分が認められる可能性を踏まえた上で、交渉による早期解決を目指すか、または法的手続きによって第三者の判断を仰ぐことにするべきかどうかを検討しましょう。

労働問題の初動対応の重要性

労働問題が起きた場合、企業にとっては様々な法的リスクが生じることになります。

民事責任

未払賃金等の債務を支払わなければならない場合があります。

刑事責任

悪質な労働基準法違反事例と判断された場合には、刑事責任を問われることもあり得ます。

行政責任

悪質な労働基準法違反事例の場合には、是正勧告等の行政責任を問われることも起こりえます。

社会的責任(レピュテーションリスク)

企業はCSRを問われる時代となっています。悪質な労働基準法違反事例の場合には、SNSなどで一般人によって企業名や違反事例の概要をインターネット上に拡散されることも起こりえます(いわゆる「ブラック企業」と揶揄される可能性もあります)。

従業員から内容証明郵便が送付された場合の初動対応

従業員から内容証明郵便を送付された場合の初動対応のポイントは、以下のとおりです。

回答期限の法的拘束力

まず注意しなければならないことは、労働者側からいつまでに回答するよう要求されているからといっても、回答期限には法的拘束力があるわけではないということです。

したがって、労働者側が設定する回答期限までに慌てて回答する必要はありません。

よくある失敗の1つが、一方的に設定された回答期限をみて驚いてしまい、十分に検討することもせずに安易に要求に応じてしまうことですので、ご注意ください。

他の従業員に与える影響

次に、会社側が安易に労働者側の要求に応じることによって、他の労働者にどのような影響をあたえるかということも考慮する必要があります。

実際には労働者側が過大な請求してきたにもかかわらず、会社側として紛争を大きくしたくないと考えてすぐに要求に応じることで、果たしてこの問題は沈静化するといえるでしょうか。

逆に、内容証明郵便を送付しただけですぐに要求に応じるようであれば、他の労働者も簡単に要求に応じてもらうことができると考え、際限がなくなってしまうおそれもありえます。

このように、個別の労働問題のはずが、気が付かないうちに他の労働者にも拡がっていき、ひいては会社全体の経営を揺るがしかねない事態にまで発展するおそれもあります。

1人の労働者との間だけの問題と安易に考えず、他の労働者との関係でも、どのような対応が望ましいのかは、慎重に検討する必要があります。

従業員から訴えられた場合には労働問題に詳しい弁護士にご相談ください

従業員から内容証明郵便が届いた場合、無視することは厳禁です。従業員側の主張内容を精査した上で、会社側の対応が法的に認められる可能性が高いかどうかを詳細に検討する必要があります。

検討の結果、会社側の言い分が認められる可能性を踏まえた上で、交渉による早期解決を目指すか、または法的手続きによって第三者の判断を仰ぐことにするべきかどうかを検討しましょう。

従業員から訴えられた場合、個別の問題解決だけではなく、会社の企業秩序全体の問題としても捉える必要があります。

このような観点で問題解決に取り組むためには、労働問題に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

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