企業の「経営三権」と団体交渉における留意点

はじめに

企業が健全な経営を維持するためには、労働者との適切な関係構築が欠かせません。その中でも、「経営三権」と呼ばれる基本的な経営権限の理解と行使は重要です。また、団体交渉や労働組合との関係についても適切な対応が求められます。本ページでは、企業の「経営三権」の内容と、団体交渉や組合活動に対する対応の際の留意点について解説します。

Q&A:企業の「経営三権」とその対応

Q:企業がもつ「経営三権」とはどのような権利ですか?

A:企業には、従業員の労働三権(団結権、団体交渉権、争議権)に対する権利として、「業務命令権」「人事権」「施設管理権」があり、これらを「経営三権」と呼びます。この三権は、企業が独自の経営判断を下すために認められた重要な権利です。労働組合との交渉においても、経営判断に関しては企業が主体的に決定できることが法的に保障されています。ただし、適切な運用には一定の知識と注意が必要です。

企業の「経営三権」とは

企業に認められた「経営三権」は、以下の3つの権利を指し、企業が業務を円滑に行うために必要な指示を出す権利を法的に裏付けています。この権利は、企業が労働者に対し、職場内の秩序や業務の効率化を図るために行使することができ、経営の重要な一部とされています。

「経営三権」の内容

1.業務命令権

業務命令権とは、企業が従業員に対して業務に必要な指示を出す権利を指します。健康診断の受診や業務における指示など、労働者にとって業務に直接関連しない場合も含め、従業員の指導や指示を行うことができます。また、職務遂行に必要な指揮命令を行った場合、従業員にはその指示に従う義務が生じ、職場秩序の維持に寄与します。このため、たとえ業務時間内に組合活動を求められても、業務命令権に基づき、業務を優先させるよう指示を行うことが可能です。

2.人事権

人事権は、企業が従業員の採用、配置、異動、昇進、昇給、解雇などに関する決定を行う権利です。経営者は、この人事権に基づいて、従業員の配属や昇進に関する最適な判断を下すことが可能です。しかし、注意すべきは、労働組合と交渉事項としないことです。特に、労働組合の役員の配置や異動に関しては慎重な対応が必要です。組合役員の人事に不当に介入することは不当労働行為とされ、法的リスクが発生する可能性があるためです。

3.施設管理権

施設管理権とは、企業が自社の施設や設備を管理し、使用条件を定める権利です。労働組合は、本来使用者の援助なしに運営することが原則ですが、場合によっては掲示板や組合事務所の提供などの便宜を図ることもあります。しかし、企業は施設管理権の範囲で提供の可否を決定することができ、掲示板の設置や掲示内容の管理も企業の裁量に基づきます。ただし、表現の自由に関する法律上の配慮が必要であり、表現内容に干渉する場合は慎重さが求められます。

企業が団体交渉等の組合活動に対応する場合の留意点

企業は労働組合との団体交渉において、法律で定められた範囲内で適切に対応することが求められます。以下のような点に留意し、経営判断の自由を保ちつつ、組合との適切な関係を維持しましょう。

1.交渉事項の線引きを明確に

労働組合との交渉事項をあらかじめ明確に定めておくことが重要です。労働条件や賃金に関する事項は交渉対象となることが一般的ですが、経営戦略や事業の方針については経営者が最終的に判断を下すべき事項です。これらの区分を労働協約等で事前に定めておくと、無用な対立を避けられます。

2.組合活動と業務命令のバランスを取る

労働組合活動が業務に影響を及ぼす場合には、経営者は業務命令権を根拠として適切に制限をかけることが可能です。例えば、業務時間中の組合活動に制限を設け、組合が業務の妨げにならないようにすることが求められます。業務外の時間であれば組合活動を認めるなど、業務と活動のバランスを取った対応が重要です。

3.不当労働行為に注意する

労働組合や組合活動に対して企業が影響を与えすぎると、不当労働行為と見なされるリスクが生じます。例えば、組合活動への参加を理由に人事評価や待遇で不利益を与えることは不当労働行為に該当する可能性があります。特に、組合役員の人事異動など、組合活動に関連する人事権の行使には慎重な判断が必要です。

弁護士に相談するメリット

企業が団体交渉や労働組合対応において適切な対応を取るためには、労働法の専門知識が必要です。弁護士法人長瀬総合法律事務所では、労働問題に関する豊富な経験をもつ弁護士が、経営者にとって最適なアドバイスを提供します。以下のようなメリットがあります。

  • 法的リスクの回避:不当労働行為など、法的リスクがある行為について事前に適切な助言を得ることで、法的トラブルを未然に防ぎます。
  • 団体交渉のスムーズな進行:交渉事項の整理や対応のアドバイスを受けることで、団体交渉がスムーズに進みます。
  • 経営判断の適切なサポート:経営者が意思決定を行う際に、法律的な観点から適切なサポートを受けられます。

まとめ

企業が健全に経営を行うためには、「経営三権」を正しく理解し、労働組合との関係を適切に管理することが重要です。経営判断と組合活動とのバランスを取りつつ、法的リスクを回避しながら事業を円滑に運営するためには、弁護士によるサポートが不可欠です。弁護士法人長瀬総合法律事務所は、経営者が安心して経営判断を下せるように、労務管理の側面からサポートします。企業の法的対応に関するご相談はお気軽にお問い合わせください。

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