労働組合の結成上の留意点

Q&A

Q:労働組合とは何でしょうか?

A: 労働組合とは、会社で働く従業員たちが団結し、賃金や労働時間などの労働条件をより良くするために会社と交渉するための組織です。個人では言い出しづらい改善策や要望も、組織的に主張することで実現しやすくなります。

Q:労働組合を作るメリットはありますか?

A: 従業員同士が力を合わせて会社と交渉できることは大きなメリットです。個人では対抗しにくい「賃金の引き上げ」や「労働条件の見直し」などを、より対等な立場で話し合える可能性が高まります。

Q:会社側にとってはどうでしょうか?

A: 会社側にとっても、従業員の声を把握しやすくなるなどのメリットがあります。労務管理のリスクを早期に発見して改善策を検討できるため、結果的に会社の信頼性向上や組織力強化に役立つケースもあります。

本稿では、労働組合の作り方や必要書類、さらに「弁護士に相談するメリット」などについてご紹介いたします。

はじめに

本記事では、次のような内容を順を追って説明します。労働組合を作ることを検討中の方だけでなく、会社経営者や労務管理担当の方にも役立つよう解説します。

  1. 労働組合とは何か?
  2. 労働組合を作る2つの方法
  3. 労働組合の資格審査について
  4. 弁護士に相談するメリット
  5. 労働組合を作るときのポイント
  6. まとめ

1. 労働組合とは何か?

労働組合とは、会社に勤める複数の従業員が中心となって結成し、賃金や勤務時間、その他の労働条件を改善することを目的として活動する組織のことです。個人で会社に給与アップなどを申し入れるのは心理的にも難しく、会社側からの不利益が心配になるケースが多々あります。しかし、労働組合であれば、「個」ではなく「集団の力」を活かして、より対等に交渉できる可能性が高まります。

  • 労働組合法による保護
    労働組合は、労働組合法という法律によって保護を受ける場合があります。会社との団体交渉に応じてもらえないときには、不当労働行為として労働委員会に救済を申し立てることができるほか、正当な争議行為ならば損害賠償責任を問われないなどのメリットを受けられます。
  • 労働組合の自主性
    労働組合として法的保護を受けるためには、自主的に組織・運営され、管理職(使用者の利益代表者)の参加や会社からの資金援助がないことなど、いくつか条件があります。これらの条件をクリアしていることで、法律上の保護対象として認められ、労働委員会への救済申立てなどが可能となるのです。

2. 労働組合を作る2つの方法

労働組合を作る場合、「法的保護を受ける労働組合として作る方法」と「任意の団体として作る方法」の2種類があります。

  1. 法的保護を受ける労働組合
    労働組合法による保護を受けるためには、一定の要件を満たした上で労働委員会に届け出をし、審査を受ける必要があります。保護を受けることで、団体交渉や争議行為に関して強い法的地位が得られます。
  2. 任意の団体として作る労働組合(未届け出)
    労働組合は、届け出の義務がないため、極端な話をすれば「サークル」や「同好会」のように自主的に集まって結成することも可能です。しかし、このように届け出をしていない場合、労働組合法上の手厚い保護を受けることは難しくなります。

3. 労働組合の資格審査について

労働組合法上の労働組合として認められるためには、「自主性」や「民主的運営」、そして規約に必要事項を記載していることなどの要件を満たし、都道府県労働委員会で資格審査を受ける必要があります。

自主的な労働組合とは

  • 組織面での自主性
    管理職(使用者の利益代表者)が含まれていないことや、主たる目的が労働条件の維持・改善であることが求められます。
  • 財政面での自主性
    会社からの資金援助を受けていないことが大前提となります。会社の経費で成り立っているようだと、会社と対等に交渉することは難しくなるからです。

規約の要件

労働組合法では、組合の名称・所在地・役員選出方法・総会の開催頻度・会計報告方法など、定めておかなければならない事項を具体的に列挙しています。たとえば、「同盟罷業(ストライキ)」を行う場合には、組合員による直接無記名投票で過半数の賛成を得ることなど、民主的な手続きを踏む規定が不可欠です。

資格審査の流れ

  1. 必要書類の提出
    「労働組合資格審査申請書」「組合規約」「役員名簿」「予算書・決算書」などを労働委員会に提出します。
  2. 事務局調査
    労働委員会の事務局職員が組合の事務所などを訪問し、書面だけではわからない点をヒアリングします。
  3. 公益委員会議での審査と決定
    提出書類や調査結果を踏まえて「要件を満たす」と判断されれば「適合決定」が出され、資格審査決定書などが交付されます。不適合と判断された場合は補正が求められたり、不適合決定が下りることもあります。

4. 弁護士に相談するメリット

労働組合の結成や団体交渉に関しては、法的に注意しなければならないポイントが多く存在します。とくに、不当労働行為の禁止やストライキの可否など、労働法に関する専門知識が必要です。そこで、労働問題に詳しい弁護士に相談するメリットをいくつかご紹介します。

  1. 最新の法令・判例に基づいたアドバイス
    労働分野の法律は改正や判例の蓄積が頻繁にあり、最新情報を把握している弁護士に相談することで、正確かつ有益なアドバイスを得られます。
  2. 不当労働行為を避けるための助言
    会社側が行う対応が不当労働行為に該当すると、労働委員会から救済命令を受ける可能性があります。一方で、従業員側も正当な争議行為の要件を満たさないと違法になる場合があるため、弁護士の助言によってリスクを回避しやすくなります。
  3. トラブル防止のための書類作成・契約書チェック
    労働組合の規約や、団体交渉で会社と締結する労働協約などの書類には、法的な整合性が求められます。書類作成や内容チェックを弁護士に依頼することで、将来的な紛争リスクを大幅に軽減できます。
  4. 交渉の代理・サポート
    団体交渉が決裂しかけた場合や、会社と従業員との間で意見が大きく対立した場合など、弁護士の代理交渉やサポートがあると、解決に向けてスムーズに話を進められる可能性が高まります。

5. 労働組合を作るときのポイント

労働組合の結成を検討する場合、以下の点を意識しておきましょう。

目的を明確にする

労働組合はあくまで「労働条件の維持改善」を図る組織です。個人的な不満や特定社員を攻撃するためだけの組合は、会社との間でさらなる対立を生むことがあります。

他の解決策との比較検討

雇用契約に関する問題を解決する手段は、労働組合による団体交渉だけではありません。たとえば、労働審判労働裁判労働基準監督署への相談など、状況に応じて複数の選択肢があります。「全従業員の地位向上」というより、個人的な残業代トラブルなどの解決が目的であれば、労働組合以外の方法も含めて検討するとよいでしょう。

管理職の参加に注意

労働組合の自主性を保つために、管理職(監督的地位にある者)の参加は制限されるケースが多いです。管理職が組合に加入すると、労働組合の要件を満たさなくなるおそれがあります。

専門家に相談する

労働組合結成や運営に関する法的リスクを避けるためにも、労働法に詳しい弁護士など専門家に事前相談しておくと安心です。特に会社側であれば、会社専門の弁護士に、従業員側であれば労働者専門の弁護士に相談するほうが、それぞれの立場に即したアドバイスを得やすいでしょう。

6. まとめ

ここまで、労働組合の基礎知識から、具体的な作り方や資格審査、費用、メリット・デメリット、そして弁護士に相談するメリットまでご紹介してきました。労働組合は、会社と従業員の間で「集団交渉」ができるという重要な役割を担います。個人的な要求だけではなく、会社全体の労働条件の改善に向けて取り組む点が大きな特徴です。

  • 労働組合を法的に保護される形で作りたい場合は、労働組合法の要件を満たして労働委員会の資格審査を受ける必要があります。
  • 任意の団体としての労働組合も結成可能ですが、法律上の手厚い保護が受けにくい点に留意が必要です。
  • 会社側としては労働組合の存在を一概に敬遠するのではなく、従業員の声を吸い上げて改善していく大きなチャンスと捉えることができます。
  • いずれの立場の方でも、労働法の専門家である弁護士に相談しながら進めると安心です。

当事務所(弁護士法人長瀬総合法律事務所)は企業法務部門として会社側のご相談に注力しております。 労働組合トラブルをはじめとする労働問題に精通し、Zoomなどを活用した全国対応も行っております。企業の方で労働組合の問題にお悩みがありましたら、ぜひ一度ご相談ください。

本記事が、皆様の労働組合結成や運営に関する疑問解消にお役立ちできれば幸いです。労働組合は会社にとっても従業員にとっても、うまく活かせば生産性向上や労務管理の適正化につながる手段です。何かあれば専門家に相談しながら、ぜひ円滑な労使関係を築いていってください。

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