経歴詐称への対応

【質問】

求職してきたAは,当社が必要とする資格や経験を有すると履歴書に記載した上,採用面接時にもこれらの資格や経験があるとアピールしたことから採用を決定しました。

ところが,採用後に調査したところ,Aはこれらの資格もなければ経験もないことが確認できました。

Aを懲戒解雇することはできるのでしょうか。

 

【回答】

経歴詐称の内容や会社が被る不利益の程度にもよりますが,貴社はAに対し,懲戒処分や,場合によっては懲戒解雇に付すことが可能です。

 

【解説】

1 経歴詐称が懲戒事由になるか?

会社は,社員の採用にあたり,経歴の申告を求めることが通常行われています。

会社が求職者に対して経歴の申告を求める理由は,当該求職者の労働力が会社の求める条件に合致しているかどうかを判断し,また採用後に求職者の職務の決定や配属先の決定,賃金その他の労働条件を決定する資料を得るとともに,採否を決定する資料を得ることにあります。

会社がこれらの事項について申告を求めた場合,必要かつ合理的な範囲内については,求職者は真実を告げる義務があると考えられます。

仮に,求職者がこの真実告知義務に違反して経歴を詐称した場合には,懲戒事由となります。

但し,経歴詐称が懲戒事由となるためには,経歴詐称が懲戒事由となる旨の就業規則や労働協約等の定めが必要となります。

 

2 あらゆる経歴詐称が懲戒事由となるのか?

では,経歴詐称が懲戒事由になるとして,あらゆる経歴の詐称が,すべて懲戒解雇事由となるのでしょうか。

この点,経歴詐称を理由とする懲戒解雇が認められるためには,あらゆる経歴の詐称が該当するのではなく,重要な経歴を詐称したことが必要とされます。

重要な経歴とは,社員の採否の決定や採用後の労働条件の決定に影響をおよぼすような経歴であり,この詐称された経歴について,一般の会社が認識していれば雇用契約を締結しなかったと考えられる経歴を言います。

例えば,①学歴,②職歴,③犯罪歴,④病歴等がこれに該当すると考えられます。

但し,実際には社員の職種などに応じて,具体的に判断されることになるため,実際には個別の事案によって判断が異なりますのでご注意ください。

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