【使用者向け】業務の遂行—会社の備品を持ち帰る社員への処分

【質問】

私は会社の総務部に所属しており備品の補充等を担当していますが、最近あまりに頻繁に備品のボールペンやノート等を補充していることから不審に思って調べてみたところ、一部の社員が無断で持ち帰って自宅で使用しているようです。これは万引きに匹敵するような悪質な行為だと思うのですが、犯罪にならないのでしょうか。

他にも、営業部の社員の一部は、勤務時間中にもかかわらず、社用車を乗り回して銀行手続等の私用を済ませているようですが、このような社用車の私的利用は許されるのでしょうか。

また、こうした備品の持ち帰り等を防ぐためにはどうしたらよいでしょうか。

 

【回答】

ボールペンやノート等を一時的に利用する程度であれば使用窃盗として刑事罰の対象とはなりませんが、無断で持ち帰る場合には窃盗罪や業務上横領罪に該当する可能性があります。

また、社用車を私的に利用する場合、たとえ一時的な利用であったとしても窃盗罪が成立する可能性があるとともに、勤務時間中に長時間職場を離れていたことを理由に職務専念義務違反が成立する可能性もあります。

かかる会社の備品の持ち帰り等を防ぐためには、社員からの聞き取り調査や所持品検査を行うことが考えられますが、いずれも一定の限界が存在することに注意が必要です。

 

【解説】

1. 会社の備品の私的利用と刑事処分

社員が会社の備品であるボールペンやノート等を一時的に私的に利用する場合、形式的には窃盗罪(刑法235条)や業務上横領罪(刑法253条)に該当するようにも思えますが、不法領得の意思に欠け、わざわざ刑事処分にするほどのものではないとして、処罰対象にはなりません(使用窃盗)

他方、会社の備品を自宅に持ち帰る等、一時的ではなく継続的に使用する意思が認められる場合には、不法領得の意思が認められ、窃盗罪の対象となり得ます

 

2. 社用車の私的利用と刑事処分

ボールペンやノート等と異なり、自動車のような高価な備品を使用する場合、窃盗罪の対象となり得ます(最高裁昭和55年10月30日判時982号)。

したがって、社用車を私的に利用する場合、たとえ利用後に会社に戻す意思があったとしても、窃盗罪が成立する可能性があります。

また、勤務時間中に職場を長時間は慣れている場合には、職務専念義務違反となる可能性もあります。

 

3. 社員の調査協力義務

社員による備品の持ち帰り等が疑われる場合には、まず周囲の同僚等からの聞き取り等、事実確認を行うこととなります。

もっとも、会社はいかなる社員に対しても調査に協力するよう強制することができるわけではなく、①管理職のように企業秩序違反行為についての調査に協力することがその職務内容となっている場合、又は、②諸般の事情から総合的に判断して、右調査に協力することが労務提供義務を履行する上で必要かつ合理的であると認められる場合に限って、調査に協力するよう命ずることが認められています(富士重工業事件(最高裁昭和52年12月13日労判287号))。

 

4. 社員の調査協力義務

また、同僚等からの聞き取りとは別に、社員による会社の備品の持ち帰り等を防ぐためには所持品検査を行うことが効果的です。ただし、所持品検査は対象社員のプライバシー権等を侵害するおそれがあることから、以下の4要件を満たす場合に限って認められます(西日本鉄道事件)。

  1. 検査の合理的理由
  2. 一般的に妥当な方法と程度
  3. 制度として画一的に実施されること
  4. 就業規則その他明示の根拠に基づくこと

なお、会社の管理権が及ぶロッカーや机等については合理的な範囲で所持品検査の対象とすることが認められますが、社員の自家用車内については原則として捜索することは許されないものと考えられています(芸陽バス事件(広島地裁昭和47年4月18日労判152号))。

 

5. ご相談のケースについて

ボールペンやノート等を一時的に利用する程度であれば使用窃盗として刑事罰の対象とはなりませんが、無断で持ち帰る場合には窃盗罪や業務上横領罪に該当する可能性があります。

また、社用車を私的に利用する場合、たとえ一時的な利用であったとしても窃盗罪が成立する可能性があるとともに、勤務時間中に長時間職場を離れていたことを理由に職務専念義務違反が成立する可能性もあります。

かかる会社の備品の持ち帰り等を防ぐためには、社員からの聞き取り調査や所持品検査を行うことが考えられますが、いずれも一定の限界が存在することに注意が必要です。

(注)本記事の内容は、記事掲載日時点の情報に基づき作成しておりますが、最新の法例、判例等との一致を保証するものではございません。また、個別の案件につきましては専門家にご相談ください。

【参考文献】
菅野和夫「労働法第十一版」(株式会社弘文堂)

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