【使用者向け】企業秩序⑤−勤務時間外に同僚へ政治活動等を勧める社員に対する処分

【質問】

このたび、当社の人事部に対して、女性社員Yから同僚の男性社員Xについてクレームが寄せられ、対応に苦慮しています。

Yからのクレームの内容は、XがYに対して、休日に何度も自宅まで押し掛け、Xの加入する政治団体への加入や当該団体の機関誌の定期購読等を繰り返し勧めてきており、出社するのも怖くなってきている、というものです。

Xは以前も別の社員に対して同じような行動をとったことがあるため、Xに対して懲戒処分として減給処分を下そうと考えていますが、問題ないでしょうか。

 

【回答】

ご相談のケースでは詳細な事実関係が明らかではありませんが、従業員の私生活上の言動であり、従業員同士の間でのやり取りであっても、企業の利益を害するおそれのある場合は懲戒処分の対象となり得ます。

したがって、事実関係次第ですが、Xに対する懲戒処分としての減給処分も認められる場合があるものと思われます。

 

【解説】

企業秩序と服務規律

服務規律とは、服務に関する規範を中心として、会社が社員に対して設定する就業規則上の行為規範をいいます。

かかる服務規律の根拠として、判例上、会社は、労働契約関係に基づき、社員に対して企業秩序維持のために必要な措置を講ずる権能を持つとともに、社員は企業秩序を遵守すべき義務を負っている、とされています(JR東日本(高崎西部分会)事件(最高裁平成8年3月28日労判696号))。

 

職場外の行為と企業秩序

もっとも、かかる服務規律は社員が職場で服するルールであり、職場外における社員の行為には及ばないのが原則です。ただし、例外的に、職場外の行為が職場における職務に重大な悪影響を及ぼす場合には、服務規律の効力が及び、会社は当該社員に対して懲戒その他の処分を行うことが可能となります。

具体的には、最高裁判例において、職場外での職務遂行に関係がない行為であっても、企業秩序に直接の関係を有するものや、評価の低下毀損につながるおそれがあると客観的に認められる行為については、企業秩序維持確保のために、これを規制の対象とすることが許される場合もあり得る、とされています(国鉄中国支社事件(最高裁昭和49年2月28日労判196号))。

また、ご相談のケースと類似した裁判例として、私生活上、同僚の自宅を繰り返し訪問して政治活動や新聞、職場サークルへの勧誘をすすめたことに対する懲戒処分の効力が争われた事案においても、従業員の私生活上の言動であっても、企業の運営に何らかの悪影響を及ぼし、それによって企業の利益が害され、又は害されるおそれのある場合は、その限りにおいて懲戒の対象となしうるとし、従業員相互間での強要行為であっても、会社による懲戒処分の可能性を認めつつ、結論としては懲戒処分を無効としたものがあります(愛知機械工業事件(名古屋地裁昭和45年12月18日労判119号))。

 

ご相談のケースについて

ご相談のケースでは詳細な事実関係が明らかではありませんが、従業員の私生活上の言動であり、従業員同士の間でのやり取りであっても、企業の利益を害するおそれのある場合は懲戒処分の対象となり得ます。

したがって、事実関係次第ですが、Xに対する懲戒処分としての減給処分も認められる場合があるものと思われます。

 

  • 【参考文献】菅野和夫「労働法第十一版」(株式会社弘文堂)

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